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ゆっくり立ち上がり、スナオくんはお茶を淹れてくれてた。暖かいお茶はドキドキする気持ちを和らげてくれる。ずずっとお茶を飲んだ後沈黙が続き気まずい空気。
「何であれからここに来てくれなかったの」
スナオくんは隣に座り、容赦ない言葉を飛ばしてきた。イケメンに詰められるとめちゃくちゃ怖い。俺は答えられなくて俯いていたら、はぁとため息をついた。
「俺、土曜日もずっとご飯作って待ってたよ。連絡しようにもスマホ壊れちゃって」
「え?」
なんとスナオくんは土曜日に俺を待っていてくれたと言う。顔を上げるとスナオくんの端正な顔がさらに近くなっていた。
「小畑さんに会えなくなって、色々考えたんだけど俺は今まで通り一緒にご飯食べたいし、作ってあげたい。美味しそうに食べてくれる小畑さんを見ていたい」
なんだか熱烈な言葉に顔がほてってきた。そんなに思っていてくれたなんて…。スナオくんは立ち上がると突然俺を抱きしめた。
「ち、ちょっとスナオくん!」
「気持ち悪くなんかないから、お願いだからご飯一緒に食べようよ」
ギュッと力が込められ痛いくらい。だけど、スナオくんの気持ちが嬉しくて嬉しくて。鼻がツン、として涙が出てきた。
「ごめんね、スナオくん。赴任終わったらまた俺にご飯作って。一緒に食べよう」
そう言うと、スナオくんは俺の体から少し離れまた顔を見つめる。
「本当に?もう逃げない?」
「うん。たらふく食わせてくれよ。俺の胃袋掴んでるんだから」
そう笑うと、スナオくんも笑顔になる。ああよかった。これでいいんだ。スナオくんが喜ぶなら…、と思っていた瞬間。スナオくんの右手が伸びてきて、俺の顎を持ち、顔を上に上げる。そしてスナオくんの顔が近づき唇にキスをしてきた。
「…!」
少しカサついた唇が重なってきたのはほんの一瞬だったけれど、俺は驚いて唇が離れたあとも目を丸くしていた。
「俺、恋愛対象は確かに女の子だったし、男はあり得ないっ思ってる。だけど…小畑さんは、抱きしめたいって思えたんだ。俺のこと、叱ってくれたり、アドバイスくれる年上のサラリーマンが二人の時になったら子供みたいにはしゃいで。…可愛いなあって思ったときもあって…今だって」
「へ…」
「キスしてみたくなったんだよ。だから…小畑さんの望む関係になれると思うよ」
流れていた涙を指で拭いながらスナオくんは耳を赤くしながらそう言った。突然の展開に俺は半分パニックになっている。
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