こっくりさん

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こっくりさん

 数少ない心霊絡みの話を。  今はどうか分からないのですが、小学生頃とかに「こっくりさん」「エンジェルさん」とか流行りませんでしたか?  私の頃ももれなく流行りまして。  紙にひらがなで「あ」から「ん」まで書いて、「はい」と「いいえ」、そして図形を描く感じだったと思います。  ネットのない小学生の頃なんて、話題が好きな男の子の事ぐらいしかないですよね(笑) (その頃からオタクムーブをかましていたので、めちゃくちゃ絵やマンガをノートに描いていましたし、家ではゲームばっかりしていましたが)  それで、友達と一緒に鉛筆を持って、「こっくりさん」やら「エンジェルさん」とかに「××くんが好きなのは誰ですか?」みたいな質問をするんですね。  で、皆してそれとなく手に力を込めて、参加してる子の好きな男の子を知っている訳だから、その子の名前に鉛筆がくるようにして……、など。  甘酸っぱいですね~。 「××くんって、絶対○○ちゃんの事好きだよ~」 「え~、私なんてないよ~」  みたいなのが、どこの時代にも何歳になってもありますね……(微笑)。  まぁ、そういう「遊び」をするのが流行りだったのですね。  人と人でそういう話をするなら「いつもの事」。  けど、「不思議な存在」を介してのメッセージなら、友達に言われるよりずっと特別で、意味のある事に思える。  そこには友達の意思はなく、「こっくりさん」やら「エンジェルさん」が、「××くんは君の事が好きだよ」と言ってくれているので。  予定調和のもと行われる遊びなので、これで想定外の子の名前が出たら、それこそ大事件になってしまうのですが(笑)。  心霊ものの小説やドラマなどなら、これで心霊関係の事件が起こり、こっくりさんが関わっていた……という流れになる訳ですが。  まぁ、現実なのでそうはいきませんよね。  しかも私はバチバチに霊感ないので。  このエッセイでは、その中でもバチバチに霊感のない私が体験した、ちょっと不思議な事を、ちょいちょい書く予定でいますが、あんまりネタがないので、小出しにしていきます。  さて、小学生の私、仲良しグループと「こっくりさん」を昼休みとかに遊んで、「帰りの会」の前に友達とキャッキャしていました。 (こういうのの呼び方は地方性もあると思いますが、「帰りの会」とは、一日が終わる前のショートホームルームみたいなものです)  友達と追いかけっこをしていて、私が先頭でキャーキャー言いながら教室の中を走っていました。  で、右手に廊下、教室の前後に引き戸のドア。  私は廊下側の席の間を、教室前のドア方面に向かって走っていました。  黒板に向かって右側の角には、スクリーンに映すための機器がありました。  なんていう名前か忘れたのですが、デスクぐらいの高さはあったんでしょうかね?  白っぽい鉄の箱で、中に投影機みたいなのがあって、教室のカーテンを閉めて少し暗くした中で、スクリーンに映して図形とか? を映して授業のサポートに使っていました。  教室の前方角にあるその白い台に向けて走っていた時――、  フッ……、と私の目の前にキツネが現れた。  ……気がしました。  一瞬の事だったので、何も確証はないんですよ。  ただ、「何か」が見えた私は、とっさに「キャー!」と悲鳴を上げて立ち止まり、私のあとに続いて走っていた友達も、連鎖的に悲鳴を上げました。  そして、「キツネがいた!」と私が言ったら、友達も「見た!」「見た!」  これの真偽は分かりません。 「こっくりさん」が原因で起こった何やらは、集団ヒステリーがどうたら、とよく書かれますし。  感受性の高い子供だったので、余計に……とも考えられます。  ただ、当時の私は大きな悩みがあったとかではなく(そりゃ生きてるので、大小何かしらありますが)、「こっくりさん」の事も遊びだと思ってやって、その帰りの走り回りの時には、すっかり忘れていたのですよね。  でも、心の奥底には、「得体の知れないものに触れた事を気にする気持ち」があったのかもしれません。  もうずっと昔の事なので、当時がどうだったかなんて覚えていないんですが、まあ、そういうものをしていると、「ちゃんと帰さないと祟られる」とか言われるのは定石ですよね。  その「怖れ」が心の奥に残っていて、キツネを生んだのかな、と今は思います。  当時の私はガチで怖がっていたのですが。  そしてその話を、帰って母にしたら、割とマジトーンで怒られました。 「『こっくりさん』とかは、やったら駄目」と。  母は私よりずっと霊感がある人で、色々な体験をしているのですが(いずれ母シリーズも書こうかと)、やはり根拠があっての「駄目」なんだろうなと思います。  そんな私がオカルト、ホラー好きな少女に育ち、のちほど「『こっくり』って『孤狗狸』と書くのね……。動物の低級霊とかが寄ってくるのかな? キツネ憑きとかの話もあるし、あまり手を出さないほうがいいのかも」と、半分ぐらいまじめに捉えて、そういうものからは手を引きました。  というオチです。  現在はホラー映画は好きだけど、リアルの怪談やら肝試しやら、お化け屋敷も避けるタイプになりました。  おわり。  2023年5月12日(金)
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