いのまたむつみ先生

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いのまたむつみ先生

 今日、多くのオタクが絶望したのでは、と思います。  イラストレーターのいのまたむつみ先生が2024年3月10日に逝去されました。  私もとてもショックを受けて、今日はネイルの日で終わったあとルンルンしていたのですが、ニュースを見てショックを受けて動揺し、気持ちが落ち着かず頭痛がしてくる始末で……。  とりあえず朝ご飯を食べていなかったのでカフェでチキン南蛮プレート(結構大盛り)を食べ(元気じゃないか)、そのあとカフェラテを前にしてしばらくボーッとして、椅子から立てずにいました。  なので、故人を偲ぶ気持ちも込めて、いのまた先生との思い出を語りたいと思います。  ざっくりとした年代がバレてしまうのですが(まぁ、大体の方は想像はついているかと思いますが)、初めていのまた先生のイラストと出会ったのは、ハードカバーの小説『ドラゴンクエスト』のイラストでした。 「なんだ、この美しいイラストは!?」と思って、それから夢中になりました。  当時、『月の聲、星の夢』(確か)というイラスト集が出ていて、親にねだって買ってもらいました。  そうして知ったのが、『幻夢戦記レダ』や『童話めいた戦史 ウィンダリア』『宇宙皇子』でした。  その当時はレンタルビデオ店がある時で、オタク友達が『レダ』と『ウィンダリア』のビデオを借りたと言ったので、友達の家まで行って見に行った……のだと思います。  なんとなく断片的に記憶があるのですが(レダが花の中から出てくるシーンや、イズーがホバークラフト? に乗って逃げるシーンなど)もしかしたら幻だったのかな……? 分かりませんが、それぐらいぼんやりとしているのですが、うっすらと一回だけ見たことがあるような記憶があります。 『宇宙皇子』は小説はとても長くて当時の財力では買えず、テレビでアニメをやっていたのをザラザラの画質で何とか録画して見た記憶があります。  ストーリーはよく知らなくて、役小角やポニーテールの女の子、キジムナー? とかキャラは知っていて、かぐや姫みたいな金髪の十二単を着た女性キャラもいたのを覚えています。  今だと電子書籍で読めるのかな。なかなか、長いシリーズものを読める時間がないのですが……。  そして『ドラゴンクエスト』に戻り、久美沙織先生の『精霊ルビス伝説』が本当に好きでした。 『ドラゴンクエスト』の中でも、1~3のロト伝説がとても好きで(その割に1をプレイした事がない)、2の王子二人とムーンブルクの王女を自分なりに解釈して(今で言えば二次創作)漫画を描いたり、友達とリレー漫画を描いたりして、自分のオタクの基礎ができました。 『精霊ルビス伝説』の中に出てきた、黒い豹のマスクがとても好きで、今の自分にも影響を与えていたり、下巻の表紙がとても好きだったので、学校のイラストコンテストで水彩絵の具で描いて、賞をもらった事もありました。 (その賞に出したオタク友達(親友)から『あれはオリジナルじゃない』と陰口を叩かれた思い出もありました……。受賞できなくて悔しかったんだね……)  そして『風の大陸』を一生懸命お小遣いで買い集めて、こう書くととても失礼ですが物語よりもイラスト目当てでとても楽しみに追っていました。  その頃から角川スニーカー文庫などで色んな小説を買って、その当時はまだラノベという概念はなかったのですが、「こういうジャンルの小説を書く人になりたいな」という思いを持っていた気がします。  その頃に出会った大好きな物語が、渡邉由自先生の『魔群惑星』や『聖刻の書』。こちらは真鍋穰治先生のイラストが大好きでした。  真鍋先生は、そのあとも『ドラクウーン』や『ライ』など漫画を買って追いかけていて、今はこっそりとTwitterの趣味アカウントで相互フォローさせていただいています。  同じく渡邉由自先生の『精霊王国』も勿論持っていて、当時『吸血姫 美夕』の漫画を描かれていた垣野内成美先生を知って、色んな作品を追いかけていました。  垣野内先生のコミックで一番好きなのは、『ダリア・ザ・ヴァンパイア』です。あとは『面幻想』や『ワンダラー』など。 『ダリア・ザ・ヴァンパイア』でサロメを知って、今ではオペラを見に行くほど好きな題材になっています。  大学生の時にスペインに行った時、プラド美術館でとても大きなサロメの絵を見たのも覚えています。  いつかサロメオマージュの作品を書けたらいいな、とも思ったり。  いのまた先生について書こうと思ったのに、当時のオタクの思い出がドバーッと……。  その頃に、大好きな萩原一至先生の『BASTARD!!』にも出会って、本当に影響を受けました。  一生懸命絵柄を真似して、模写して、当時描いていたオリジナル漫画の魔法シーンも真似したりして。 『BASTARD!!』の中にも、いのまた先生の名前が出ていましたよね。  ヨーコさんの呪文詠唱の中に「美の女神ノーマ・イータの名において……」(うろ覚え)とありました。  その『BASTARD!!』が今綺麗なアニメになっていて、とても感慨深く、毎週楽しみに見ています。  いのまた先生がキャラデザした『サイバーフォーミュラ』はあまりよく知らなく、ゲームの『テイルズ~』も二作やった事があるだけです。  何でやっていたか分からない『みかんSTORY』という画集も、とにかく買って、飽きる事なく何回も見て、一生懸命真似ようと描いたりしていました。  学生時代はとても多感な時期で、色んな素晴らしい先生に出会っては何でも吸収しようとして、ノートに絵を描くらくがきノートも、一日10ページや20ページ絵を描いたりして、本当に狂ったように毎日創作に明け暮れていました。  その頃の私のオタクのベースを築いたレジェンドたちの中に、いのまた先生がいました。  今の私の絵を見て、いのまた先生らしさは見えないと思うのですが、手癖の中にどこかは模写して自分の「身」になった部分があったりします。  男性キャラのキュッと上がった眉毛とか、鼻筋、『風の大陸』の画集で大人の女性キャラから女体の描き方を学んだりとか、女性の手の爪の先の表現とか、今は無意識に描いている部分も、へたくそなんですが確かに影響を受けた部分ではあるんです。  そういうクリエイターが、沢山いると思います。  最近、偉大な方々が立て続けに亡くなられていますが、自分に凄く影響を与えた方が亡くなられると、本当にガクッときますね……。  しばしこの喪失感に浸りながらも、あとに続く者として、何らかの形で創作し続け、日本のオタク界を少しでも盛り上げていけたらなと思っています。  ありがとうございました、いのまた先生。  本当に、本当に、大好きでした。  2024年3月18日(月)
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