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部屋の中は、血飛沫が散乱としていた。
どれも時間の経ったものばかりで、床や壁に染み付いたものは錆びのように変色している。
けれど部屋自体は、近日中に使われていたであろう形跡が残されていた。
床に落ちていた葉巻の吸い殻は、そのうちの一つである。
匂いですら酷いものだった。
何かが腐ったようなものと、口の中まで酸っぱくなるようなものと、異様に甘いものとが混ざり合う不快感。
いったい、この場所で何が行われていたのか。
それを知るには、もう少し奥へ進む必要がありそうだ。
ジェーンは、意を決したように部屋へ入った。
どこか死にに行くような気持ちでさえした。
そんな心中で歩いていたせいか、ここ二週間の出来事が頭の中を巡っていく。
たった二週間の日々が、今のジェーンにとっては全てだった。
何故なら、ジェーンは記憶喪失なのだから。
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