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翌日、私は編集長に呼び出された。
「昨日はお疲れ様、色々と迷惑をかけたね」
「いえ、私も息子さんに出会って良い経験をしました。これまで以上に小説のため、読者のため、作家さんのために頑張りたいという気概が生まれました」
「そこで……相談なのだが、編集部に新しい風を吹かせたいと考えている。どうだ、副編集長をやってみないか?」
編集長はデスクの上で手を組むと、興味深そうに私を見つめた。
「私が副編集長をですか?」
「ああ、今や女性が世の中を変革する時代。しかしこの業界ではまだまだ女性が活躍する場所が少ない。新たなトレンドを作り出すには、君のような覚醒人材が必要だ」
「そういうことでしたら……お受けいたします。そしていつか大ヒット作品を世に送り出したい」
それからというもの、私はコンテストの審査だけでなく、書籍化の企画検討、マルチメディア展開なども参画して、缶チューハイを飲む暇もないほど忙しい毎日を過ごした。
でも短編小説コンテストの審査は息抜きになる。
一次選考からは外れ、最終選考に携わるようになっていた。
そしていつものようにノートPCを開き、小説を読み始めた瞬間、プッと笑いが込み上げてきた。
それはどこかで読んだことのある懐かしい文体。
また会えたね——
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