君という作家を見つけて

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 妄筆獣はくわっと口を広げると、茶色く染まった煙がそこに凝縮されていく。  そして私めがけてその煙を一気に放出した。  灰煙が帯のように連なり轟音を立てながら私を襲う。思わず私は手で顔を覆った。  ——バサリ!  もうだめだと思った瞬間、盾を持ち、目の前に立ちはだかる者が現れた。  もうもうとした煙が消えていくと、その姿が徐々に明らかになっていった。 「……編集長!」 「すまん、遅れた。危ないところだったな。古い校正紙しか手元になかったが、とりあえず(しの)げた」  ここで想定外の伏線人物が登場。盾だと思ったものは赤字の入った校正紙の束だった。まだペーパーレス化が遅れている。 「編集長、どうしてここに?」 「だから言っただろう? あの作家はあれだって」 「あれって何ですか。危険ということですか?」 「いや、あの作家は……私の息子だ。そして目の前にいる妄筆獣はまさに私の昔の姿。息子にこんな妄想を抱かせてしまったのは、私のせいなんだ」 「息子さん……でもかなりイケメンで編集長には全然似ていないですけど」 「母親似なんでね、でも小説好きは私に似た。まさか小説を書き始めるとは思っていなかったがね。この妄筆獣は私が抑えておく。今のうちにノートPCからログインして、この小説を削除してくれ。そうすれば妄筆獣は消える」 「でもそんなことしたら、選考から外れてしまいますよ」 「構わない。ここで落選しても、機会はいくらでもある。息子にはまだまだ経験が足りない。さあ、早く!」  だんだんと校正紙に皺が寄り始め、(よど)んだ色に変色していく。
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