君という作家を見つけて

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「今は期間限定の白桃フラペオーレが飲めるから、いかがです?」 「フラペオーレ? そんな飲み物あったかしら」  レジ前のメニューを眺めると、たしかに品名が並んでいる。 「これさ、前に飲んでみたかったんだけど、期間が過ぎていて飲めなかったんだ。それでここで飲もうかと思ったんだけど、ほら登録商標があるからさ、別の名前がいいかなって」  彼は何を言っているのだろう。  二人で透明カップを持つと、窓際のソファに座った。  ストローでフラペオーレを吸ってみると、これまで飲んだことのない甘い香りとコクのあるクリームの味わいが口中に広がった。 「これすごく美味しい!」 「でしょ? 瀬戸内白桃を使って、クリームはブラウンスイス牛の生乳から製造されているから。でもこれひとつで420キロカロリーもあるから、ハンバーガー一つ食べるのと変わりないけど」 「随分詳しいのね」 「うん、そう設定したから」  また訳のわからないことを言う…… 「それであの、どこでお会いしたでしょうか」 「僕さ、ストーリー考えるとき、その世界に入っていかないと書けないタイプなんだ」 「はい?」 「それでいつもは遠目に眺めながら、主人公がどんな行動するのか、追っていたんだけど」 「はあ?」 「そうするとさ、何にも起きないんだよね」  何か怪しい宗教の勧誘だったのかも。イケメンでなければ、すぐに逃げ出すところ。 「これは多分世界観の設定が足りないんだなと思って、いよいよあれを出してみたんだ」 「あれと言うと?」 「あなたが秘密にしていること」
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