君という作家を見つけて

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 質問攻めで困る、この男子高生の熱意はどこから来ているのだろう。 「もっと夢があったはずです。その夢を現実のものに変える力が、あなたにはあるはずです」 「私に夢なんか……」 「百万部超えの大ヒット小説を出してみたいと思っていたでしょう?」 「そんなこと今の私の立場では無理よ……」 「あなたが編集長になればいいんですよ」 「えっ?」 「いいですか、今やあなたの担当している媒体の読者、編集者は七割が女性でしょう? でもなぜか女性が編集長になったことがない。あなたが初の女性編集長になって、編集部を変革するんです。そして常識の枠を超えた規格外の小説を世に出していくべきです」 「今あなたの小説の話をしていたんではないかしら?」 「この物語の主人公はあなただから」 「作家が勝手に書き変えればいいんじゃないの?」 「それじゃあ、編集者なんている意味ないじゃないですか。編集者が革新的な作品を選定し、より良くするための助言を与え、世に送り出す。そして新しい文化を創っていく。すべては編集者にこの世界の命運がかかっているんです」  ズズンという鈍い音がカフェの外から響いてきた。天井から壁の破片がフラペオーレの上にパラパラと落ちてきた。
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