君という作家を見つけて

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「ほら、あなたが(ほう)けているうちに新たな妄筆獣がまた襲ってきた。あれを止められるのは、あなただけです」 「もう一度、私に覚醒しろと?」 「そうです、物語をもっと面白いものに編集してください。この世界をワクワクさせるために」 「もしこれが君の書いた小説だとしたら、妄筆獣を出現させたのも君でしょう? 自分で消せばいいじゃない」 「残念ですけど、もう応募期間は締め切られて、今書き換えたら規定違反になります」 「この後、どんなストーリーを構成したの?」 「それは、小説を読んでみてください」 「今確認してみる」  急いでスマートフォンを開こうとしたら、ガラス窓がバリンと割れる音が聞こえてきた。  のゔぇろおおーんという地面を揺らす重厚な唸り声が響き、思わず耳を塞いだ。    店内では慌てた客たちが悲鳴を上げ、人を押し倒しながら入口に向かう修羅場となった。 「もう、私に何をさせたいの!」 「この状況でどう展開するべきなのか、編集者の意見を聞きたいのです」 「ええ、何それ! ええっと、そうねえ、普通に客たちを押しのけて出ていくのでは難しいわね。もっと別の方法を取らないと」 「ああ、そういうものなんですか? そうですねえ、それではついて来てください」  彼は客が押し寄せる方向と反対側に進んでいった。そこは—— 「裏口!」 「はい、通常店舗には従業員用の裏口があるはずです。パニックになっている時こそ、落ち着いて行動することが必要かと」  二人で裏口から外に出て上を見上げると、無数の煙草を咥え、もくもくと口から煙を吐く妄筆獣の姿が見えた。
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