わからなくても

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 目が覚めると、私はテーブルに突っ伏していた。どんな風にして戻ったのか、全く記憶がない。そもそも出歩いてもいないのかもしれない。全てが夢で。  彼に伝えなければならないと思った。何をかはまだわからない。でも、父は亡くなってしまったけど、彼は生きている。話ができるんだから。  電話を掛けると、彼はすぐに出た。出先のようで、少し周囲がざわついている。 「今、電話、大丈夫?」 「うん。大丈夫」 「私、どうしたらいいか、わからないの」 「うん」 「あなたの転勤は動かせないし、私も仕事がある」 「うん」 「でも、私はあなたを失いたくないし、やっぱり別れたくない。それは伝えたいと思った」 「うん」 「今、どこにいるの」 「君の家の近く」 「え……」  思わず窓の外を見る。見慣れた人影があった。 「同じこと伝えようと思って、向かってたところだった。どうしたらいいのか、僕もよくわからない。わからないけど、君が大切だから、別れたくない。だから、これからどうするか、一緒に考えよう。きっと、なんとかなるから」  ほどなく、玄関のチャイムが鳴った。
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