わからなくても

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わからなくても

「これからもっと忙しくなると思うし、がんばってね」  そう言って、彼氏と笑顔で別れた。  別れた彼氏は私の一つ後輩で、一年前、失意のどん底にいた時に付き合い始めた。  何もかも忘れようと、がむしゃらに仕事に打ち込む私を、寡黙な彼はそっとサポートしてくれた。その温かさに心慰められて、告白された時、静かにはいと返事をした。  それから、今日まで、とても穏やかに二人の関係を育んできたように思う。 「転勤が決まったんだ」 「そう」  お互いそれ以上何も言えない。  ついてきてくれとも、逆に転勤を取りやめてくれとも。だって、二人とも仕事に対して真剣で、どちらも今辞められるような状況じゃないから。そんなことはわかりきっている。  私に言えたのは、仕事を応援する言葉だけ。  家に帰って焼酎を飲んだ。ここで甘いカクテルとかを選ぶ女子なら、可愛く何か言えたかな。次につながる何かを。芋焼酎をロックで飲んじゃうような私には、何を言えばよかったかすらわからない。  泣きながら、へべれけになるまで飲んだ。
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