甕覗きの川

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 一人?  おい、藤子…、    藤子…。  呼びかけても返事はない。  そうか、薬が切れたのか。  左手に残る乳房の柔らかな感触。  そして、右手に残る脛椎の硬質な感触。  出会ってはいけない二人だった。  最初からわかっていた。  だから、なんとか距離を取ろうと試みたこともあった。  でも、どうしてもできなかった。  抗えないリビドー。  少しずつ、用心しながら、深めあった二人の愛。  深く求めれば求めるほど、終わりの刻が迫ることはわかっていたのに。
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