無人駅にて

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 「なんで、悩んでるって思うの?」  「だって、先生がここに来るときって悩んでるときしかないですもの。」  藤子の声にはノイズがない。  内耳から脳に突き抜けリンリンと心地よく響く。  「藤子はあいかわらず賢しこいな。」  「まあ。先生からそんなことを言って頂けるなんて。」  両手を腰の後ろで組んで、嬉しそうに少し横揺れをしている。  髪は濡羽色のロング。  今は後ろで束ねている。    「どれくらい前から来ていたの?」  「そうね、二時間くらいになるかしら」  「そんなに前から居たのにずっと黙ってみていたの?」  「ええ、先生の思考のお邪魔をしちゃいけないと思って。」  
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