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「 この相談室で話す内容としては、やや特殊な案件だと思うのだが?」
私は滾りを隠すため、抑制した声でそう告げた。
「 私は率直にと最初に伝えました。」
「 失礼。
では、今の時点で、あなたはどのような手段を用いれば、この悩みが少しでも楽になっていくと思っていますか?
また、この悩みは、今のあなたの生活や人生にどれくらいの実害がありますでしょうか?」
「 女性として、いや人間として生を受けたのに、オーガズムを知らずにこの先の人生を歩んでいくことは、100%不幸でしかないと考えています。
最初の質問の答えとしては、やはり、それをしてくれるパートナーを見つけることが一番の近道だと考えています。」
「 なるほど、非常に明確なお考えですね。
しかし、正直、実践するにはかなりのリスクが生じるのでは?
快楽の為に命を賭けることに賛同は得にくいと思われます。
ああ、すみません。あなたを否定している訳ではなく、一般論として言わせて頂きました。」
女はフォグブルーの目を閉じた。
三十秒程の沈黙。
三十秒の沈黙は長い。
まるで、漆黒の面廊の端と端にいるようだ。
「 この相談室で話す内容としては特殊ではあるかもしれませが、相応しいと思っています。
私なりに導いた解決の方法には、先生の協力が必要だと考えておりますので。」
きた。
向日葵色の警報が脳内に響く。
「 なぜだね?」
やはり、知っている。
いや、見抜いている?
どっちだ?
どっちでもいい。
「 先生と私は同じだからです。
いくらうまく隠しても隠しきれない性と暴力の匂いというか、残り香のうな物が先生の普段の立ち振舞いから感じられます。間違っていますか?」
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