目を覚ましたらパンダになっていた

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 わたしがパンダになってからは生活ががらりと変わった。  妻は最初に見た時には腰を抜かした。リビングでソファに座り正午になるまで話し合った。声を出した時に自分でも驚いたが、声帯は人間の声帯らしく、わたしは普段より太い声になってしまったが話すことができた。食べ物も竹やリンゴなど、動物園にいるパンダと同じものでないとだめかと思ったが、妻の作ってくれたサンドウィッチを食べることができた。しかし、器用に食べることができないため、熱いものは少し冷ましてから食べることにした。また、歯を磨くのができないため、妻に手伝ってもらった。人間の姿であった時と変わらない生活は出来るとわかり、それだけでも大きな前進ではあった。娘がクレヨンでパンダの絵を描いている――そのパンダはわたしのことなのだろう。その横でわたしはふと小学生の頃に読んだ児童書を思い出した。サーカスの見世物にされている、子どものように小さな人間や逆に大きな背の高い人間、全身毛に覆われたオオカミ男。今のわたしは全身パンダのように毛の生え、太った体形の人間で、それと同じなのではないか? 子どもの頃に読んだ本が役に立っているのか、そう思うと納得がいった。全身の毛をそり落とせば、わたしは元の姿に戻れる? そう妻に相談し、試しに左腕の毛を挟みで切ってもらったが、あまりに毛の量が多く、毛は短くなったが皮膚は見えなかった。手の骨格の変形も著しく、月曜日に総合病院へ行き、見てもらうことにした。妻は事情を勤務先に伝え、一緒に車で行くことにした。
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