(2)猟奇者

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 俺は思わず飛び退き、恐ろしさの余り尻餅をつく。同時にお婆さんだったモノはスクッと立ち上がり、俺を見下ろす。ニコニコとしながらも、どこか嘲笑じみている。  俺は、口に出したくもないその名を口にした。 「こ……小五郎……」  同時にそいつは、纏め上げた白髪交じりの髪に手を掛け、剥ぎ取る。よく出来たカツラだった。ほどかれた髪は、黒くツヤのある髪へと変わる。シワだらけの顔に若々しい黒髪は、一種異様な不気味さがあった。  それからそいつは、持っていたハンドバッグの中からチューブを取りだした。クレンジングクリームだ。それを顔中に塗りたくり、ハンカチを使って慣れた手つきで手早く拭き取ってゆく。と、まさに化けの皮を剥がすように、艶やかな――いや、艶やかすぎる透き通った肌が露わとなっていった。  現れたのは、先程のシワだらけの老婆の面影など微塵も残さない目鼻立ちの整った美しい顔。そうだ、忘れもしない、思い出したくもない、その顔。恐るべき小学五年生…… 「やあ小林君、久しぶりだね。怪異探偵の明智小五郎だ。覚えていてくれて嬉しいよ」  幼くも美しい少女(そいつ)は、俺を見下ろし笑顔を浮かべた。相変わらずの悪魔みたいなニコニコ顔……
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