(2)猟奇者

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 初めて出会った時から、俺のソレは小五郎に見抜かれていた。  常に俺の心の中に鎌首をもたげている黒い衝動。  今日は特に酷くて……囁かれていた……今日は調子がいいと……  俺は耐えられずに、小五郎の笑顔から顔を背けて俯き、小さく返した。 「俺だって、好きでこんなんじゃない。本当は、もっと普通でいたいのに……」 「あきらめたまえ。『キミの本質は悪だ。キミに普通など訪れやしない』そう言ったはずだよ?」  ああ言われた。そう言い切られた…… 「そんな哀れな顔をするものじゃないよ。キミの猟奇(それ)は、なかなかに珍しい怪異(なぞ)なのだからね。なにせあんなか弱そうな早苗さんの前では、未だにその本性を現していないのだから。誇ってもいいくらいだ」 「お前が楽しんでいるだけだろう……」 「探偵とは、そういうものだよ」  こいつとの問答は、本当に嫌になってくる……  俺は、頭を抱えながらヨロヨロと立ち上がり、胸に手を当てて大きく一つ深呼吸をした。よし、やっと目が覚めた。『普通』が戻ってきた。 「ふむ、それじゃあ早速だが話を本題に移そう――」  俺に併せるように小五郎も立ち上がり、再びニコニコ顔を浮かべた。 「――あっ、その前に、予め言っておくが、今日ここでキミと出会ったのは、まったくの偶然ではないからね」  その瞬間、恐ろしい予感が過ぎった。 「まさか、俺の事をずっと尾行(つけ)ていたのか?」
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