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だが、小五郎は声を上げて笑った。
「ハハハッ、いくらボクだってそんなヒマじゃないよ。キミに用事があってキミの大学に向かう途中だったんだ。まあ、ついでにちょっと変装でもして驚かしてやろうと思ってね。したら、たまたま信号待ちをしているキミを見つけたのさ」
にわかには信じがたいが、追求するのも恐ろしいし、ここは流しておくか……
「あ、ああ、そうか……で、俺に用事って……?」
「ちょっとね、ボクに代わって人捜しをしてほしいんだ」
「人捜し……?」
「簡単なモノだよ」
言いながら小五郎は、懐から小さな黒い手帳を出してそれを俺に手渡す。
「その手帳に依頼の詳細と探す順序は記してある。言わばマニュアルだ。キミはボクを名乗ってそれに書いてある通り捜索を進めてくれればいい」
「ちょっと待て。意味が分からないぞ」
「今、言っただろう。ボクに代わってと」
「そうじゃなくって――いや、それもあるが……!」
「いやね、この依頼は昨晩舞い込んできたものなのだが、今ボクは他の案件を抱えていて手が離せないんだ。しかし依頼人は、どうしてもボクに捜索してほしいというのでね。そこで助手であるキミの出番というわけさ」
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