(2)猟奇者

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「……分かったよ。でも、俺だって大学があるんだ。そう長くは手伝えないぞ」 「案ずる事はないよ。その気になれば今日一日で終わる仕事だ」  そう言い終わると、小五郎は上着を脱ぎ、それを裏返しに着た。と、さっきまでの年寄り臭いえんじ色の上着は、紺色のスーツジャケットに早変わりした。リバーシブルになっていたようだ。  そして小五郎は、スーツに隠れた長い黒髪をかき上げる。その姿は颯爽としていて、不本意ながらもつい見惚れてしまった。 「小五郎も、そんなの着るんだな……」 「ああ、そうか。初めて出会った時はラフな格好をしていたからね。あの一件は友達のよしみで引き受けた依頼だったから正式なものじゃなかったし、だから当然報酬も受け取っていないんだ。でも、今は正式な依頼料が発生している調査の最中だからね。今回は依頼人とも会わなければいけないし、そういう時はジャケットの一つも羽織るのさ」  小学生が依頼料…… 「それじゃ頼んだよ、小林君」  それを捨て台詞に小五郎は、俺に踵を返して去って行った。本当にアイツは一体……
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