(2)猟奇者

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 その赤色を、俺は目を細めて見上げていた。 「最近の信号はまぶしいな……LEDで見やすくはなったけど……でも、あの赤は駄目だ……」  誰にも聞こえないくらいの声で呟く。 「あれは……あの色は、まるで血だ……」  ふと、俺は軽い目まいを覚える。どんな時も普通を求める自分が、今は普通じゃない事は分かっている。  だから、今日は調子が良かった。  五月下旬。街路樹には目にも鮮やかな新緑が溢れ、通りかかる公園では、幼い娘を連れた親子連れが、色付き始めたアジサイを笑顔で眺めていた。父親は幼い娘と笑顔を交わし、母親はスマートフォンでアジサイをバックに夫と娘を写真に収めている。鬱陶しい梅雨入りを前にした幸せの風景。普通の暮らしが垣間見える、いつかは自分も早苗と、と考え、羨ましく思える風景……  だが、今は、どうでもいい事だった。  空を見上げる。  曇天。  昨晩、早い梅雨入りを告げていたテレビの天気予報士の得意気な顔が目に浮かぶような、今にも降り出しそうな曇り空。 『今日はちょっと大学行くの遅れるから、早苗は先に行っててくれ……』 『どうしたの? 風邪でもひいた?』 『まあ、ちょっとね……でも大丈夫だから……』 『そう……気をつけてね、モトキ君』
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