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旅先でよく「勝負!」と言って喧嘩を売られることがあった。
村ではそんな経験は皆無だったが眉毛を太くしたためだろうか毎日のように勝負を挑まれた。そして向こうがどことなく隙を見せるのでそこに一撃加えるだけで一礼して退散していった。
勝負は命懸けでやるもの。
武士道とはそのようなものだと考えていたが村を出て色んな奴がいるものだと改めて思い直した。
勝負に挑もうとする者ほど大概俺より弱く眉毛も細い。
自分は弱いのではなくて村の連中が強いのだと思い始めた。
眉毛を太くして旅に出てから一ヶ月間が経った。
相変わらず勝負を挑まれては腰を引けて挑んでくる輩が多かった。
これでは何のために旅に出たのか分からなくなって来た。
自分が思ったより強いのだろうか?
はたまた強い手合に会えないのはこの眉毛のせいだろうか?
思い切って今日は眉毛を描かないで過ごしてみよう。
そうして何日か過ごしていたが誰も勝負を挑んで来ない。
まるで自分は勝負を挑む価値のない人間のように皆が素通りしているようにも感じた。
通り過ぎるものが笑い声を上げると自分が嘲笑われてるようにも感じた。
そんな日々を送っていたある日、俺はとうとう再び眉毛を太く書いてしまった。
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