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 うしろを歩いていた須田が隣にやって来て、真剣な声音でそんなことを言いだすから、心音がますます速まっていく。  男がだめなんじゃない、男しかだめな自分。  だけどそんなことを唐突に直球で尋ねられても、静のほうは正直に答えられない。 「男相手とか、気持ち悪いって思っちゃいます?」 「そう思うのは、須田のほうだろ」  以前、デートに誘った女の子が少食だと嫌だ、と話していた。  須田はそうやって今までに何度も女の子をデートに誘ってきたということだ。  ああ嫌だ。  こんなずいぶん前の須田との会話の中の、些末な一部分を覚えている自分の気持ち悪さに鳥肌が立ってきた。 「オレのほうは平気っていうか、むしろ積極的に静さんと交わりたいっていうか」  右手が、右側を歩く須田の左手とぶつかった。  偶然触れただけだと思ったそのすぐあと、指先をまとめてぎゅっと握られて、ただでさえ速すぎた心臓が爆発しそうになり、静はその場に立ち止まった。 「オレは今までは女性としか付き合ってこなかったけど、静さんだったら、というかもうそんな問題じゃないや。たぶんすでに落ちてるんだと思う」  独り言のような伝える気のなさそうな須田の声が、うつむいたつむじの辺りに重くかぶさってくる。
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