1

2/3
484人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「ミーティングは以上です」  朝のミーティング終了後に申送りノートを日勤の担当者に手渡す。  夜勤の仕事はこれで終わり。  そのままナースステーションを出ようとしたところで主任に呼び止められた。 「静くん、紹介するわ。彼、昨日から病棟のリハビリに来てくれてる須田(すだ)和真(かずま)くん」  そういえば昨日出勤前の夕方に、新しいリハの人間がひとりこのフロアに来ていると誰かから聞いた気がする。  小さくて丸っこい主任の隣に立つとスラリとした長身が際立つその男は、深く素早く頭を下げてから頑丈そうな白い歯を見せて、理学療法士の須田です、と名乗った。  学生時代、絶対モテたであろう体育会系のさわやか青年という感じ。  初々しさとこなれた感じが混じった印象で、とにかくただきらきらとまぶしい。  夜勤明けのにごった目に一秒だって映していたくない、四月の空気をまとった男だ。 「静です」  小さく告げ、こちらもそっと頭を下げると。 「名前、なんすね」  言われた意味がよくわからず、聞き返す代わりに軽く目を合わせたら、須田は好奇心に満ちた目を静の名札に向けた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!