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 まあ、明るく感じるのは彼がよく笑うせいもあるかもしれない。 「なにかあったら呼んでください」  ガーゼ交換を終えた患者に告げ、仕切りカーテンを開ける。  と、病室の入口にうずくまっているさきほどの叫び声の主である長身の男を見つけて、静はひとつため息を落とし、そっと近づいた。 「どうかした?」  かがんで声をかけると、のそっと、彼らしくない緩慢な動作で顔を上げ、涙目で静を見上げてくる。  どのパーツも自分の1、5倍くらいありそうな、男らしく派手な顔立ちが今ちょっと間抜けに見えるのは、鼻からぽたぽたと血が垂れているせいだ。 「静さーん」  母親に助けを求める幼子のような情けない声を出して、須田が今に至る経緯を話しだす。  病室の、開けると自動で閉まる自閉式の引き戸を外から開けて、中に入ろうとしたら廊下から患者に声をかけられ、ひと言ふた言交わしたのち、開けたつもりでいた病室に入ろうとしたところ、自動で閉まっていた扉に顔面をぶつけたということだった。
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