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「立ち上がろうとしたら頭くらーっとして。あぶねーって思ってしゃがんでじっとしてたら、今度は鼻血がぼたぼた出てきて、全然血が止まんなくて」  立ちくらみがして鼻血が出るほどだ、どれだけ派手にぶつけたのか。  医療用カートからティッシュを取りだし須田の鼻に軽く詰め、ガーゼを濡らして鼻の付け根を冷やす。  静は須田の説明を聞きながらも着々と処置を施し、血液で濡れた須田の手と床をアルコールを含ませたナプキンで拭って、立ち上がった。 「二、三十分経っても血が止まらなかったら、先生に診てもらって」 「白衣の天使」 「は?」 「って感じ。静さん」  しゃがんだまま見上げてくる須田からすっと目をそらす。  須田が突然恥ずかしげもなくおかしなことを言いだすせいで、頬のあたりが熱を持った。 「意味がわからない」  そのままカートを押して病室を出たら、須田があとからついてくる。 「しばらく安静に」 「もう大丈夫っす」 「おまえ、八号室に用があったんじゃ……」  どうしてついてくるんだ。  扉に顔面をぶつけたことで、本来の用事を忘れてしまったのではないかと危惧したら。 「静さんが八号室に入ってくの見かけたから、追っかけたらこんなことに」  振り返ると、ティッシュを詰めた自分の鼻を指さし笑う。  通りすがりの女性医師が須田の顔を見て吹き出し、ひと言声をかけて去っていった。
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