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「え、静さんそんなに食うんですか?」  メインの親子丼と冷やし中華のほかに小鉢を三つ、隙間なく詰まった静のランチトレイの中身を見て須田は驚愕している。 「食べないと午後がもたないから」  財布にきびしいと文句を垂れるくせに、静が自分で支払うと申し出れば、これはお礼で約束だから、と須田は頑として譲らなかった。  昨日、鼻血の処置のお礼にごちそうさせてください、と言われ頷いたけど、その約束を静はできれば現実にしたくなかった。  だけど早めの昼休憩のためにこっそりナースステーションを抜けだしたところで、須田に捕まってしまった。  午前十一時の院内食堂は、まだ昼のピークを迎える前で人が少ない。  窓際の二人掛けのテーブルに、須田と向かい合わせで座る。 「意外すね。食細そうに見えるのに」  食べるぞ、と気合を入れて腕まくりしたところで須田がぼそっと言った。
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