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 目線の先はシャツをまくった静の、ところどころ青紫の静脈が浮き出た細い腕。 「悪かったね、貧弱で」  胃下垂なのか、静は昔からどんなに食べても太れない体質だった。  それに看護師は肉体労働だが、これも体質で毎日労働しても筋肉はあまりつかない。  正直目の前の男がうらやましいと思う。  同じ職場で働き始めて一週間が経つが、須田は細めなのに全身にしなやかな筋肉がついているようで、日常の動きを見ていても無駄がなく、体幹のバランスがいいのが一目でわかった。  そんな理想体型に貧弱な体を見られ続けるのが居たたまれなくて、静は一刻も早く食べ終えてこの場を離れようと、手を合わせて食事を始めた。 「いや、そうじゃなくて。いいなって思って、ギャップが」 「ギャップ? なんだそれ」  まだ全体を混ぜきっていない状態の冷やし中華を端からずるずる吸いこみながら、静は首を傾げた。
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