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しばらく話をしたけれど、手島が聞き上手だったんだろう、思いの外居心地がよく、お酒もおいしく飲めた。
同窓会はそろそろ終わるけど、二次会に行くか? と川瀬に訊ねられる。
「明日早いから、帰る」
「手島は?」
「あー、じゃあ……」
どうしようか惑っている手島の袖口をつかむ。
「戸田?」
「ちょっと酔っちゃったからさ。駅まで送ってよ、手島」
「……わかった」
「じゃ、戸田ちゃんのこと頼んだぞ、手島! これを機にまた遊んでよね、戸田ちゃん!」
川瀬からにこにこの笑顔で見送られた。あの人懐っこさは相変わらず武器だな。
手島は駅までゆっくり連れてってくれた。私に袖口つかまれながら。
「手島、まだ電車ある?」
「俺はあと二本あるから問題ない。戸田は?」
「もうない」
「え? じゃあ、どうすんだ?」
「ほんとは明日休み。だから、もうちょっとだけ一緒にいてよ。今日は一人で過ごしたくない気分」
そう言うと、私は手島の手に指を絡めた。
あきれるほどありふれた台詞。別に愛なんてない。お互い恋人と別れたばかりで、何か欠けてるものを埋めたかった。
仕掛けたのは私。でも、手島も乗ってきたんだから共犯だろう。
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