青春、ひどく苦い

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 私は教科書の下に隠したスケッチ用の小さな手帳に雲を、窓を、そして眠る生徒を描き出した。私にとって、青春を切り取るのにはこの方法が最も適しているように思う。  後に見返した時、輪郭だけを頼りに記憶を辿ることで、確かにここに存在する時間を自分の形に再現できる。色や匂い、音が主観と混じり合った私だけの形として蘇る。それが、スケッチが最も都合の良い復元装置である理由だ。  今この瞬間を青春として認識してしまういやに客観的な私にでも出来る、正しく青春を味わう唯一の方法に思えた。言うなれば私は、青春という時間に対して、現在進行形でコンプレックスを抱いているのだった。
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