青春、ひどく苦い

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 ふと窓の方へ視点を移すと、フジタさんがいた。教室の隅、窓際でいつも黙って座っている女子生徒だ。無機質な黒髪が夏の風に乱されていたが、気にすらしていないようだった。  彼女は常に彫刻のような固い表情に、強い意志や誇りを讃えていた。  彼女には友人らしい友人はいない。周りを気にすら留めてすらいないようなその素振りは、明らかに異質であると言えた。つまり彼女は、おそらく悪い意味で目立ち、噂の対象となるような人物だった。  しかし実際のところ、彼女の噂を聞くことは稀だった。その雰囲気はある意味における神聖さを持ち、誰しもが彼女を評価することを躊躇っているかのように思えた。  しかし他者の評価に対する神聖さのベールはとても危ういものだ。ひと度誰かが一線を超えた時、安全性が確認された時、雪崩のような悪意が彼女を襲う。私は、友人達との付き合いの経験から、それを悟っていた。
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