Prelude この世界が進み行く路

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 フィンレーの十日に渡る葬儀が終わり、ベアトリーチェは三日間喪に服していた。 喪が開けると同時に絢爛豪華たる四頭立ての馬車がベアトリーチェの家の前に来訪した。  ベアトリーチェをボード帝国へと送迎するために、カミーリアが出した馬車である。  ベアトリーチェは数日前にカミーリアより届けられた金糸の刺繍が全体に縫われたドレスを纏い、貴族服を纏ったマクフライの前で、ドレスのスカートの両端を持ち上げて、最敬礼を行った。 「では、お父様。これまで長い間お世話になりました」 「うむ。カミーリア殿に可愛がってもらって、幸せになるのだぞ」 ベアトリーチェはこれまで何回も潜った玄関の戸を開けた。それと同時に御者が馬車に乗るための階段(ステップ)を置いた。 それから馬車の戸が開き、いつもとは違ったオメカシをしたカミーリアが馬車の中より降りてきた。 「お手を」 ベアトリーチェはカミーリアの手を握り、馬車の中へと乗り込んだ。椅子に座ると、名残惜しそうに生まれた家を眺めるのであった。  カミーリアも塵か何かを見るようにベアトリーチェの生家を眺めていた。 それから呆れたように毒吐(どくづ)いた。 「あのような犬小屋にも劣る板張りの家でよくも暮らせたものだ」 犬小屋にも劣る家で何年も暮らしていたあたしは何なのだろうか。ベアトリーチェは不快感を露わにするも、これから夫となる男の言葉である故に堪えるのであった。  カミーリアであるが、王族の生まれ故に平民は物の数と思っていなかった。使用人より凝り固まった思想を受け付けられていたのである。 しかし、ベアトリーチェは平民の身にもかかわらずに愛してしまった。物の数ではない平民であっても美しいことに変わりはない。妻にしてしまえば貴族であると割り切ったのである。
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