2nd movement 皇帝が生まれた日

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「腑分けの予定も立っていたんだけど、葬儀の予定を全てニセアーニャが立てていたんだ。たった半日の葬儀で、荼毘に付すのもその日の夕方だった」 「遺体の検分を行われたくなかった……?」 「近くとも、ボクと姉さんはそう見てるよ。兄さんは泣きじゃくるばかりで何も考えてないようだったけどね」 ベアトリーチェはイールソーの話の内容を考えるに、敵は同じであると考えた。 女帝ニセアーニャに、皇太子カミーリア。この二人を排除することで夫である伝説の勇者フィンレーの仇は成ると考えたのである。 「ちょっといいかしら」 「何か?」 「ニセアーニャにカミーリア…… ミリ・ボードとヴィ・ボードの名字(ラストネーム)を持ってるわね。それは公妾になって得たものでしょう? 前の名字(ラストネーム)は分かるかしら?」  イールソーは宙を見上げ考えた。確か、あの阿婆擦れは元は低級貴族。昔、チラッと聞いただけだが、確かに貴族の名前であった。暫し、考えに考えて思い出した名字(ラストネーム)を述べた。 「ラブリバー」 「え、それって……」 「歴史の教科書でしか知らないぐらいの昔にボード帝国に戦争を仕掛けてきた国だよ。ニセアーニャ・ラブリバー。ラブリバー国の田舎貴族、今になって思い出したよ」 ベアトリーチェは壁に飾られた世界地図を一瞥した。その世界地図には国境線がハッキリと書かれており各国の領土の大きさがハッキリと分かるものだった。 ラブリバー国は…… 極めて小さい領土だった。大国のボード帝国に比べれば十分の一以下である。 「昔は敵国、そんな国の貴族のお姫様が嫁入り…… 政略結婚以外の何者でもないわね」 「今の皇帝の血筋はラブリバーの貴族由来のもの…… 我が父ボード皇帝の血は半分…… 気に入らない」 「あら? ティキランが皇帝になりさえすれば皇帝の血は完全に途絶えるわよ? 知らないのはあの二人だけでしょうけどね」 「いや、ラブリバーの血が我が系譜に入ったことの方が気に入らぬのだ!」 ベアトリーチェは(いき)り立つイールソーの反面冷静であった。それから、提案を行う。 「あたしとしては、あの二人が気に入らないだけ。特にカミーリアは殺してやりたいぐらいだわ。あなたも、気持ちは似たようなものでしょ?」 「まさか元老院が兄を飛ばしてニセアーニャを皇帝に指名するとは思いませんでしたよ。確かに愚かな兄ではありましたが…… 元老院と国務大臣でも支える自信がなかったのでしょうね」 「厳しいことを言うなら、あなたのお兄さんが愚兄でなければこんな問題は起こってなかったと言うことね。それはともかく…… ラブリバー(あの二人)の血を排して、ボードの純血に戻したい訳ね? 確かアルビナカンビオレ様はボード皇帝の従姉妹のお姉さんでいらっしゃるとか」
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