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「どうせ少しの領土だけでしょう。少しぐらいなら領土をくれてやって講和しよう! 戦争はダメだよ! 代打師! 今すぐに講和の文書作成を!」
その瞬間、防衛大臣が円卓を思い切り拳で叩きつけた。
「何を言っておられるのです! 領土を取られてそのまま差し上げますなんてことが許されるとでも思うておりますか! 一度これを許してしまえば際限なく攻めてきますよ!」
「し、しかしだな…… ビジネスではこうして恩を売って特をさせることで友好関係をですな」
防衛大臣は再び円卓を叩きつけた。ビジネスと戦を一緒にするなど、頭の中に蛆虫でも湧いているのではないか? 怒り混じりの進言へと入った。
「恩だの特だのどうのこうのというのは、金のやりとりでしょう? 今は領土と命のやりとりを行っているのです! 失礼致しました」
朕は皇太子であるぞ? この朕に口答えとは気に入らん! カミーリアは不貞腐れたように舌打ちを放った。そして、吐き捨てた。
「なら、どうしたらいいんだよ!」
防衛大臣は待ってましたと言わんばかりに高らかに叫んだ。
「すぐに領土の奪還を行うのです! 今、ラブリバー国は侵略した国境近辺の領土に駐屯地を作っております。その駐屯地を一気に攻め落として領土の奪還を成すのです!」
財務大臣が挙手をし、防衛大臣に質問を投げかけた。
「兵の人数は? 武器弾薬の確保は? 兵站の維持は? その為の予算の承認をするのは私なのですからね? その辺りをハッキリして貰わないと」
「カネカネって五月蝿いな。国を守るんだから黙って承認しろよ?」
「国を守るにも金が必要なんですよ? 使わない剣を研ぐ為の砥石や、無意味に装飾を派手にする鎧の鍍金費用! 大砲のメンテナンスにも予算を割いてるんですからね! 戦もないのにどれだけ予算圧迫してると思ってるんですか?」
「国が潰れるぞ!」
「金がなくなっても国は潰れます! その予算を管理するのが我々の仕事です! 予算の見積もりを出してから出直して来てください!」
ベアトリーチェが挙手をし、防衛大臣に質問を投げかけた。
「あの、領土を侵略した兵力の規模は? その規模に応じて予算の見積もりをしても遅くはないのでは? ただ、私としては戦は絶対に反対です、我が国の兵士の命…… いえ、臣民の命は誰一人として失うようなことはあってはなりません」
防衛大臣はベアトリーチェが元百人隊であることから一目置いている。臣民の命を守りたいと言う発想も、百人隊として数多くの死を見てきたからこそ言えるのだろうと考えた。
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