3rd movement 女帝果つる日

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 この防衛大臣であるが、魔王の脅威が去った後に防衛大臣に就任している。つまり、(いくさ)の経験はないのである。それ故に「初めての(いくさ)」になり、人を殺すかもしれないと言う恐怖心に負けないように、居丈高かつ剛気に振る舞っていたのだった。 すると、文部大臣が頭を抱えながら円卓の上へと突っ伏した。そして、挙手もせずに叫び始めた。 「ああ! なんと言うことだ! 両国関係は良好だった筈なのに! 外務大臣! 何か失礼をしたのではないか!?」 外務大臣はそっと目を背けた。この外務大臣、実は数日前にラブリバー国の晩餐会に出席しており、ラブリバー国王ガーリデービス・デ・ラブリバーと「末永い両国との友好関係を築き上げよう」と会話を交わし、その旨を書いたニセアーニャの書簡も渡している。  普通に考えれば、数日後に(いくさ)を仕掛ける国の外務大臣に対する態度ではない。 その話を聞いていたカミーリアは恐る恐る挙手を行った。 「女帝陛下…… いえ、母は元はラブリバー家の貴族の出、ガーリデービス・デ・ラブリバーはラブリバー家を束ねる大貴族にしてその頂点。そんな家からすれば母のラブリバー家はチリも同然…… おそらくは舐めきられているのだと」 それを聞いた瞬間、元老院長老は怒鳴りながら立ち上がった。 「カミーリア! 貴様ら! 謀りおったな! 貴様! ラブリバー国の貴族の中でも上級の出と言っておったではないか! だから公妾にするのも許可してやったというのに!」 「仕方ないだろ! そうしないと公妾として釣り合わないからって! 隣のラブリバー国なんて小さな国の貴族制度なんてロクに調べないだろうからって家のサバを読んだだけだ!」  あンの田舎貴族かつ低級貴族の女狐めが…… 元老院始め、国務大臣全員は「騙された」と激昂していた。今すぐにでもニセアーニャに対する弾劾裁判を開きたいところだが、今は(いくさ)になるかならないかの瀬戸際の状態。それに皆がニセアーニャを女帝にすると決めた身であるために責任は自分達にもあることは明白。そのことを副大臣や臣民に知られればこれこそ任命責任からの責任問題で今の職を追われるかもしれない。 皆、保身のためにニセアーニャを「今は」女帝で居させ続けることを決意するのであった。 元老院や国務大臣の腐敗の一端を見たベアトリーチェは「この国、案外長くないかもしれない」と呆れたように溜息を()いた。 ここでニセアーニャを潰すことは出来ない。今、この国を戦火に巻き込むことでニセアーニャを潰すことも出来るが、無駄に臣民の命を散らしてはいけない。  そう、これはあたしの夫の敵と、平民の出であると言うだけで屈辱を与えられたことに対する復讐なのだ。それに臣民を巻き込んで命を散らさせるようなことはあってはいけない。誰であろうと……
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