Prelude この世界が進み行く路

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Prelude この世界が進み行く路

 かつて、この世界は魔王の脅威に晒されていた。  魔王の正体は神に造られし天使、神は天使よりも後に造られた人間を寵愛するようになった。 神は天使たちに「これよりそなた達は私の造りし人間を愛し、従うように」と勅命を出した。  天使たちは神が愛する人間を愛した。しかし、三分の一の天使は人間を愛することが出来ずにそれを拒否し、神と袂を別ち、神々の住まう天界から去り堕天使となった。 やがて、堕天使達は人間たちが暮らす人界より更に地の底にある地界に居するようになった。 堕天使たちは地界と人界を繋ぐ穴を潜り抜けては、人間に災いを齎すようになった。 人間を殺し食らうは当たり前、人間の造りしものの破壊、人間同士お互いに殺し合わせるなど、暴虐の限りを尽くしてきた。 その頃には堕天使達は人間から「悪魔」と呼ばれ恐れられていた。  人間を愛する神にとって、人間に災いを齎す悪魔は許されざる存在。 神は人間を守るために悪魔に戦いを挑むのであった。 神が造りし天使たちは人界を形成(かたな)す天然自然の概念たるもの。元は天使であった悪魔も同一たる存在。  天使と悪魔の戦いは人界を荒れ狂わせた。 太陽は人界を燃やすように熱く輝き、波は人界を飲み込むように荒れ、風は大地にあるものを全て吹き飛ばすかのように吹き、大地は人界を激しく揺れ動かした。  天使と悪魔との力は全くの互角。天然自然の概念同士の戦いを続けていては共倒れになると、方針を切り替えた。 悪魔は神が愛した人間を滅ぼすことで、精神的勝利を得ることにしたのである。  人界へと侵攻し、暴虐の限りを尽くすようになったのは先述の通り。 悪魔は人界への侵攻において、自分達の中で一番強い者を頭目へと持ち上げ従うことにした。 その頭目こそが魔王である。魔王は元々は名前無き天使の中の一柱であったために、名前があろう筈がない。 こうして魔王によって人界に災いが齎され、人間たちは魔王を恐れるようになったのである。  人間たちは何も為す術もなく蹂躙される訳はなく、魔王に抵抗を見せた。 神は残酷にも人間たちを脆弱にお造りになられたせいか、累々と屍を積み上げるのみ。 しかし、辺境の地であるギャレン国にて結成された百人隊は魔王たちとの戦いにおいては連戦連勝の快進撃。百人隊の隊長であるフィンレーは一騎当千の強者、その強さは行く先々の救われた者たちに「伝説の勇者(ゆうじゃ)」と称されるようになっていた。 そしてついに、フィンレー率いる百人隊は魔王を倒すと言う奇跡を起こすのであった!  魔王亡き後、世界各国を跳梁跋扈していた魔物達は煙のようにフッと姿を消してしまった。 魔王の脅威に晒されていた世界がついに救われたのである。
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