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決意
実験もそろそろ終わりに近づいてきた。後は筆記で受けてもらう心理テストとインタビューで終わりだ。お礼も兼ねてご飯をおごると申し出た。これなら強引ではなくスマートな誘い方だろう。
この日のために美容院に行き、服も靴も一式全て買いそろえたのだ。待ち合わせの場所に5分前につくと彼女はもうすでに来ていた。
襟付きの長いワンピースを着ていた彼女はいつもとは違う柔らかい印象だった。そう、彼女はぼくと同い年だけど大学にはいかずに市役所で働いている。だからいつもはスーツではないけれど、シンプルでこざっぱりとしたパンツスタイルが多かったのだ。
「自動運転が主流になると今の車運転しちゃだめになるのかな。」
「いや、法律を変えるわけじゃないよ。」
「あ、そうか。よかった。私あの車気に入ってるの。」
大事にしているのは車を見てもわかった。いつもぴかぴかに磨かれたボディー。車内も綺麗に掃除されていて、交通安全のお守りが飾ってある。車が好きで自動車工学を学び始めた身としては車を大事にしてくれていることはとてもうれしいのだ。
右近さんのことでわかったことは他にもある。5人兄弟の長女で、一番下の弟とは10歳離れていること、実家暮らしであること。車は父親の通院の送迎のためにお給料をためて買ったものであるが、唯一の自分だけの空間であり気に入っていること。お守りは2人目も妹が買ってくれたものだということ。
右近さんがしっかりしているように見えるのは働いているからだけではないと思う。
もっと知りたいなと強く思う。こんな時スムーズに誘うにはどうしたらいいのだろう。一緒に右折の練習しませんかと誘おうかなと考えると、自動運転でなくて人の運転もいいもんだなと考えた。
そういえば、人だからこそ、ぼくと右近さんは出会ったのだ。1度目は対向車として。そして、右折が苦手で一日二回会えることとなったのも人だからこそだ。
全てを機械化してしまうと味気なくなってしまうのかななんて考えていたら、右近さんから意外な話を告げられる。
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