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出会い
ぼくと右近さんが初めて会ったのは大学に行く途中。対向車線の軽自動車が一台右折待ちをしているのに気づいた。ぼくはいつも機械のように15分前に大学につく。一台入れてあげたところで遅刻はしないので、入れてあげることにした。だってその右折待ちの車のおかげで後ろは大渋滞。クラクションを鳴らされていて、可哀そうに軽自動車は汗の絵文字がぴったりなくらいおろおろしているように見えたから。
ただ、スピードを緩めても全然行く気配がなく、完全に止まっても運転手はまだ不安そうにきょろきょろしていた。
「どうぞ」行っていいよということをジェスチャーで示したところ、途方に暮れた顔が一気にほころんで、控えめでありながらも対向車にも嬉しさが伝わるくらいの笑顔を見せてペコリとしてくれた。そして、ようやく右折をし、ぼくはまた、大学に行くために前に進んだ。
たったそれだけの事なんだけど、その時のほっとした笑顔があまりにも印象的で、なんかいい事したなっていう気分に浸ることができた。
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