出会い

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 ぼくがこの時点でひとめぼれをしたとかそういうわけではない。当時のぼくは恋愛から一線をひいていた。初めてできた彼女に二股をかけられてふられて以来、恋愛というものを遠ざけていた。「素直くんがいないと生きていけない」なんて言葉でいいながら、僕も親友にも同じ言葉をかけていた元彼女。「最近彼女とうまくいってるか?」と相談に乗るふうに近づいておきながら、その裏で当の彼女と裏で会っていた元親友。傷つくというより、理解ができなかった。  例え、もし好きになったとしても順番が逆であろう。ぼくと別れてから付き合えばいい。たとえぼくが研究に忙しくて彼女に寂しい想いをさせていたからといって、それは行っていいという合図ではない。親友にしてもそうだ。少しの間隔があいていたからって無理やり押し入ることはすべきではない。きちんとルールを守ることがどうしてできないのだろうか。そう思うと益々恋愛や人間関係よりぼくの趣味であり専攻でもある自動車工学にのめりこんでいったのだ。  話が脱線してしまったが、要は右近さんとの最初の出会いは「ひとめぼれ」という類では断じてなく、ただ傷ついていた自尊心をほんの少しだけ癒してくれる出来事だったのだ。普段は車の自動運転の研究をしているけれど、人間の運転もいいものだなっていう具合にね。
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