祝日が終わる日

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娘が退院した。ぐったりと病院のベッドに横たわっていたのが嘘のように元気になってくれた。 僕は娘に付き添うために1週間会社を休んだ。 娘との時間はとても楽しかった。成長した娘と長い時間をともに過ごすことはあまりないからだ。 僕は、明日からの仕事復帰に少し緊張した。 翌日早めに会社に行き皆に誤った。部署のみんなは僕の仕事を片付けてくれていた。花子さんも何故か張り切っていたそうで問題なく過ごしたらしい。 僕は取引先に連絡をし復帰を伝えた。 僕は日常に戻り忙しく働いた。 みなみには、しばらく会わないと伝えた。みなみも了承してくれた。 月日はたち2ヶ月が過ぎた。もうみなみはきっと僕のことなど忘れていると思っていた。会社でのみなみは、部長として僕に接していたし、連絡もないからだ。僕はあっけなく終わった恋に少し寂しさを感じていた。 「今日、クライアント周りに同行してほしい。」 みなみからのメールがきた。僕は了承し午後からのクライアント周りに備え準備をした。 クライアント周りは順調に進んだ。みなみと行くと不思議なもので、クライアントが必ずと言って良いほど契約をしてくれた。そのためか、僕は少し気分が良くなっていた。 「みなみ、今日時間あるかな。」 「えぇ。あるわよ。このあとは事務仕事だから。」 「会社が終わったあと久々に飲みに行かないか。」 「了解。」 みなみと僕は居酒屋に行くことにした。 居酒屋の席につくと、僕は緊張した。みなみは美しい。僕らは生ビールを頼み、あれこれとおつまみを注文した。居酒屋のご飯はどうして美味しいのだろう。僕は、刺し身をつまみながらお酒を飲み、また飲みすぎてしまった。みなみも今日は酔っていた。 居酒屋を出た僕たちはタクシーに乗りホテルを目指した。後部座席の僕らは手を繋いだ。みなみからは甘い香りがした。 ホテルでチェックインをした僕らは、愛し合った。 離れていた時を忘れるように二人は固く結ばれていく。このときの僕は、みなみと僕の糸はほどけることはないと信じていた。少し前まで家庭を大切にしようとしてたのに僕の心はまたみなみを見ていた。 「なあ、みなみは何であんなに素敵な旦那さんがいるのに僕みたいな冴えない男と愛し合うの。」 「あのね、素敵かどうかなんて恋に関係があるのかしら。確かに、旦那は素敵な人よ。見た目も性格も最高だわ。だけど私の心を彼は満たしてくれはしない。結婚してから私が心から満たされたことはないの。彼はいつだって全く別を見ているのよ。私を見たことはないの。彼はね、男性が好きなの。 何故私と結婚したかといえば、簡単なことよ。世間体を気にしたから。彼は、社会的にも成功をしている。だからこそ、プライベートも成功者である必要があるの。だから見た目の良い私を選んだのよ。」 そこまで言うと、みなみは泣き出した。みなみは孤独をひとりで抱えていたのだ。結婚してしばらくは泣きながら過していたらしい。我慢して我慢して自分の気持ちを殺していた。ある日みなみは、やけになりクラブで知り合った男と身体の関係を持ったらしい。すると、今まで心に隠していた物が吹き出してきた。みなみはそれから、自分の気持ちを偽らなくなった。好きな男ができたら恋をした。しかしみなみが家庭を持っているとわかると男たちは去っていく。それでも新しいパートナーを見つけてきたらしい。ちょうどパートナーと別れた頃、僕と出会ったらしい。 僕はみなみとこの先どうなるのだろうか。 他の人みたいに別れる日がくるのだろうか。 僕は別れの日を頭から除去する。絶対にうまくいくはずだ。 だが、固く結ばれたみなみと僕の糸は永遠のものではなく、脆いということに僕は気づかなかった。 段々とほころんで行く糸は果たして僕をどこにつれていくのだろうか。
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