祝日が終わる日

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僕は憂鬱だ。今日は事務仕事のために1日会社にいる。僕の目の前で花子さんがあれこれ忙しそうに働いているふりをしている。さっきから仕事の合間に私用のスマホで何かしているのを僕は知っている。 黙っていれば良いのに、独り言を言うし、気が散る。僕は、コーヒーを入れに給湯室に向った。 給湯室には、女たちが、3人いた。あれこれと雑談しながらコーヒーを入れている。上司の愚痴が主な話題みたいだ。僕は入りづらく入口で少し待つか悩んでいた。そこにみなみが現れた。 みなみは涼しい顔で給湯室に入って行き、3人を仕事に誘う。そしてコーヒーを2つ入れて僕に一つ手渡した。 「ありがとう。」 「どういたしまして。今日少し時間あるかしら。」 「午後なら。」 「仕事終わりの話。今日、飲みに行かない。」 僕は行く事にした。毎日酒を呑み帰りが遅い僕を妻はどう思っているのだろうか。僕は妻に連絡をし、今日は飲むからかえれないかもとつたえた。 妻は、あまり無理しないようにと僕を労ってくれた。罪悪感はあった。でも罪悪感を上回るワクワクとした気持ちがあるのも事実だった。 仕事の終業時間あと5分のところでまた花子さんが問題を起こした。今日仕上げなくてはならない資料を仕上げていなかったのだ。パニック状態になった花子さんは泣き出した。明日資料が必要な関係者は資料作りに取りかかった。僕もみなみも手伝いなんとか資料が出来上がったのが21時だった。 帰り際に僕のスマホに連絡が入った。 「お疲れ様。今日は私の家で呑みましょう。」 僕らは別々に会社を出て別々にみなみに指定された場所へ行った。前にみなみにタクシーで連れて来てもらった家とは違う場所にあるマンションだった。 僕はマンションの入口でみなみを待つ。 みなみは、買物をしてきたようだ。 「おまたせ。中に入ろう。」 僕らはマンションのエントランスを抜けてエレベーターに乗った。5階で降りて一番端の部屋のドアを開け中に入った。 みなみは、風呂を入れて食事の用意をしている。 僕はソファーに座り待つことになった。 ここが何処かはわからないが清潔感がありおしゃれな部屋は、ホテルみたいだと感じた。  僕は風呂に入った。そして、みなみの用意してくれた下着と部屋着を着てソファーに座った。 みなみも風呂に入り二人で食事をし始めた。 「みなみ、このマンションは自宅なの。」 「違うわ。私の家。私たち夫婦はね、本宅の他にもそれぞれの部屋を持っているの。夫婦だからとお互いずっと同じ部屋にいたら窮屈になるし、仕事や趣味で使う家を持っていても良いと思わない。」 夫婦は一緒に住むべきだと思っていた僕にはない考えだが確かにこの形で生活をする夫婦がいても何らおかしくない。 僕らは、みなみが買ってきたお総菜で酒を飲んだ。 ワインで乾杯をして、ピザを食べた。みなみは美味しそうに笑顔で惣菜を食べ、酒を呑んでいる。 みなみはこの部屋で絵を描いているらしい。 確かに、隅にある机には画材が置かれていた。 「みなみの描いた絵を見せて。」 みなみははずかしそうに僕に絵を見せてくれた。 そこには、裸の女性の身体に蔦が絡まり、緑の葉が蔦から出ているものや、女性の身体から花が生えているものが描かれていた。 「すごいね。プロだ。」 僕は本当に感心してしまい訳の分からない感想をみなみに告げた。 「ありがとう。私ゆくゆくは画廊を経営して自分の作品も売りたいと思っているのよ。」 みなみはやはり立派な人だ。僕みたいに打算で生きていない。ちゃんと自分の足で立っている。 僕はみなみにキスをした。みなみの目は優しく僕の心を溶かしていった。みなみとそのままベッドに行く。みなみは絵の女性のように美しかった。 みなみを抱きながら、妻を思い出していた。 僕は誰を愛しているのだろう。ふと自分に話しかけてみたが、二人とも好きだという答えが出た。 僕はどちらかを選ぶ事はできない。 どちらも大切だ。 僕たちはまた朝を迎えた。朝は間違いなくやってくる。今日は金曜日だ。僕は会社を休みたいと感じていた。 「おはよう。」 みなみが起きた。寝起きのみなみも素敵だ。 「ごめん。私今日仕事休むから、もう少し寝たい。だから朝ごはん用意できないんだけど大丈夫かしら。」 「うん。僕も休もうと思っていたところ。」 「じゃあもう少し、寝ようね。」 僕らは、会社に休暇申請をして休んだ。
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