祝日が終わる日

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秘密は密の味がする。 隠せば隠すほど甘く熟していく。僕はその甘い果実を食べている。癖になるその味は僕の心を刺激する。 みなみと妻は旅行以降時々、連絡をし交流している。みなみは冴子の素直な性格を悲しんでいた。 冴子が悪い女であれば、今の僕との関係を肯定できる要素はあるのかもしれない。でも冴子は、みなみのことを信じみなみに良くしてくれるようだ。 そんな良き妻を持ちながら、目の前でコーヒーをいれてくれるみなみに心を向けている僕は一体何なのだろう。今日は仕事終わりにみなみと待ち合わせ食事をし、みなみのマンションに来ている。 少し飲み過ぎた僕らはまた愛し合い、行為が終わったあとでコーヒーを飲んでいるのだ。 僕はぼんやりとコーヒーの香りを楽しんでいた。 そこへインターホンが鳴った。みなみはうろたえた。 僕はみなみの動揺する姿からみなみのご主人が来たことを理解した。みなみはとにかく自分に合わせて欲しいと僕に頼んだ。 やがてドアが開き男の人が現れた。身長が高く整った顔をしていてみなみと同じく完璧な人だった。 「あれ、お客様。」 「うん。会社の部下。営業していて具合い悪くなったみたいで、ここが近かったから保護したのよ。」 僕はみなみのご主人にあいさつをした。そして帰宅する旨を伝えた。ご主人は引き留めたが僕はそれを断り帰宅した。動揺した僕は果たしてうまく喋れたのだろうか。帰りながら反芻したが、きちんと喋れている気がしなかった。 みなみはどうして僕との関係を選んだのか。 完璧なご主人がいて完璧な生活をしている彼女にとって僕は一体どういう存在なのだろか。僕は嫉妬をしているのだろう。心が乱れていく。みなみとは遊びのはずだというのに。僕は暗い気持ちを抱えながら帰宅した。 冴子はいつも僕を安心の世界へ連れて行ってくれる。僕は冴子の笑顔を見ればつらいことを忘れられる。僕は冴子のいる日常に戻る。 「おかえりなさい。」 「ただいま。俺疲れた。明日休もうと思う。」 「大丈夫なの。最近仕事忙しいみたいだけど身体に負担きてるんじゃない。私明日パートだから1日いないし、子どもたちも学校だからゆっくり休むと良いわ。」 「うん。そうするよ。」 僕は仕事を調整し休んだ。昼間でウトウトしながら過ごした。みんなが働いている時間にこうして寝ているのはどこか後ろめたい気持ちだが、温かい布団に包まれているとこのまま何もしたくなくなっていく。僕は昼に起き近くのスーパーで弁当を買う。今日は妻のためにカレーを作ろう。僕はカレーの具を買い自宅に帰り昼食を食べながらカレーを煮込んだ。鍋からは良い香りがする。僕は一息つくと風呂を沸かそうと思った。掃除に洗濯物を畳む。一通りの家事を終わらせた頃、家族が帰宅した。 そこにメールが届いた。僕はスマホを確認した。 みなみからだった。 「体調大丈夫? 昨日はごめんなさい。   あなたに会いたい。今日会える?」 僕はみなみの誘いを断った。今日は冴子と子どもたちとの時間を優先したかった。僕のカレーを喜ぶ姿が見たかった。だから非日常の世界には行きたくなかったのだ。 僕は翌日とても忙しかった。外回りに、事務仕事に、花子さんの世話に。気づいたときには20時だった。フロアにはほとんど人はいない。僕の部署には、みなみと僕だけだった。僕とみなみは一緒に会社を後にした。そしてそれぞれ別の方向に歩いた。 行き先は一緒なのに。 僕らは、会社の近くのホテルへ行った。僕は妻に仕事が忙しいから会社の近くに泊まると嘘とも本当とも言えない言い訳をした。妻は身体に気をつけてと僕を送り出してくれた。 僕とみなみはホテルの部屋に入るとキスをした。キスをしながら離れていた時間を埋めるようにお互いを求めていく。何度も何度も。夕食をとることもせずに愛し合った。コンビニで温めてもらった弁当は冷たくなっているだろう。 僕らはどこに向かうのだろう。お互いの生活を壊さずこの密のような世界を維持できるのだらうか。 そんな都合の良い話などあるはずがない。 わかっているのに身体は逆を向く。
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