Vol.29

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Vol.29

 翌日。午前10時を回り、私は電話をかけることにした。  もしかしたら出てもらえないかもしれない。それでも私は電話で繋がる奇跡を信じて発信した。  ………… 5コール、6コール、7コール、あぁ、やっぱり無理か。そう簡単にはいかないよね…。  私が電話を切ろうとしたその時、 「もしもし。」 「あ、あの、中森です。神劉鳳先生ですか?」 「はい。私です。中森さん、お待ちしておりましたよ。」 「えっ?先生、私のこと待っててくれたんですか?」 「もちろんです。」 「あ、ありがとうございます!」 「実は今、勤務中なのですが…、中森さんからだと知って急いで電話に出ました。」 「えっ?先生、私の為に…。ありがとうございます!」 「前にも言いましたよね?中森さんは特別ですから。中森さんだけです、私がこのような対応をしているのは。」  私は先生にとって特別な存在なんだ…。  得体の知れない優越感に浸る私だった。  ここから私は、禁断の域へ足を踏み入れることになる。
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