0人が本棚に入れています
本棚に追加
外に出た。
雨空の下、傘を広げて。
けど。
別に外に出たくて、出た訳じゃなくて。
ふと、図書館へと足を運びたくなっただけだった。
雨の億劫さすら破った体は
寒さに震える。
(やっぱ外出るべきじゃなかったかもな……)
そんな後悔を少しするけれど。
心地よい風の中で。
「……また、会えたね。」
後ろからの声に振り返る。
そこに、貴方がいた。
地元を離れて数年。
全く会っていなかった貴方は。
記憶よりも鮮やかで。
とても、綺麗に見えたから。
後悔がチクりと胸を刺す。
「あのっ……私、ずっと前から……」
「貴方に、伝えたいことが-----」
手を伸ばす。
伝えようとしたけど、伝えられなかった言葉。
何度も、私の心を救ってくれた人へ。
繋がった脈が途切れていく。
言葉を紡ぐ時も、君に触れる余裕もなかった。
目の前から、消えた。
「……ありがとう。」
「またね。」
一言、二言、声が聞こえて。
甘い香りだけを残して。
----私は、夢から覚めていく。
最初のコメントを投稿しよう!