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帰ってきた私を見た時の彼女の顔は、今でも記憶に残っている。恐らく私の顔を見たことによる安堵、そのあとの、困惑、それとも違う、何とも取れない表情。
当然であろう。先生や秀さんのところに行くと言っていたはずの人間が、びしょびしょのまま、何故か赤子を抱いて帰ってきたのだから。
もしかすれば、今思えば病院へ真っ先にいくべきだったのかもしれない。しかし、パニック状態であった私は、兎にも角にも家に帰ることしか頭になかった。
恐らく支離滅裂であった私の説明を、彼女は優しく聞いてくれた。本当なら彼女の方がパニックであっただろうに。
それからの記憶は、ほとんど覚えていない。
裕太が生まれたのは、その次の日だった。
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