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今から20年前の春―
朝から雨が降っていた。夜中から降り始めた雨は明け方になってもやむことなく降り続いていた。
前日までがすっかり春模様の天気だったことと、その日の出来事と相まって、印象的に脳裏にこびりついている。
私は車で大学に向かっていた。教授の研究を手伝うためだ。その大学は私と―当時はまだ彼女だった―由美子さんの母校で、由美子さんにとっては職場でもあった。
大学を卒業して就職してから5年くらい経っていたが、定期的に手伝いに行っていた。
教授の研究は生物の生態についてである。
元々一流大学で講義をしていた程の人だったが、大学のやり方に反発し、それが原因で私の通っていた大学へ異動になった。と、人づてに聞いたことがある。
私たちの大学は、当時とはいえ地元でも決してランクが高いとは言えない大学だった。経歴を聞いた時には、かなり驚いた覚えがある。
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