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その間3ヶ月。夕香ちゃんはいつもベッドの上で私の話すクラスメイトやテレビの話を微笑みながら聴いていた。
「ねえ、朝美ちゃん」
ある日、夕香ちゃんがかすれる声で言った。自分そっくりだけど、ほんの少しだけ違う、その声が大好きだった。
「何、夕香ちゃん」
夕香ちゃんはゆっくり首を動かして窓の外を見た。
「星ってなんで輝くか知ってる?」
私はそんなこと、考えたことなかった。「なんでサッカーって存在するの」ってくらい考えたことがなかった。
星が輝くのは当たり前で、それはお父さんやお母さん、夕香ちゃんがいつも隣にいるくらい当たり前の事だった。
「えっと、光合成とか?」
夕香ちゃんは首を横に振った。
「私達にメッセージを伝えるためだよ」
そして、窓から見える、ぶどうジュースみたいな夕暮れに光る一番星を指差した。
「星が輝くのはね、亡くなった人があの光で私達にメッセージを伝えているんだよ。こっちは元気だよ。貴方は元気ですかって」
そういうファンタジーでも読んだのだろうか。私は相変わらず読書は苦手だったし、私達は好みの映画のジャンルが違った。
「朝美ちゃん、信じてないでしょう」
乾きかけた黒目で、笑って続ける。
「モールス信号って知ってる?」
またしても唐突な質問だった。
「船が難破した時に使うやつだよね」
夕香ちゃんは秘密を打ち明けるように囁いた。
「あの星達はね、瞬きでこっち側にメッセージを送ってるんだよ。トン・ツーって」
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