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それからと言うもの、私は変わった。テレビを見ても、試合の中継を見ても何も楽しくない。
サッカーに行くのも辞めた。前はあんなにボールを蹴るのが楽しかったのに。
夕香ちゃんはもう居ない。笑うことも、楽しむことも出来ない。
私の、半分は死んだ。
夕香ちゃんが死んだのに私が楽しんでいいの? そんな思いが湧き上がる。
私は2人で一緒に使っていた部屋にずっと引き篭もるようになった。
夕香ちゃんの名残りを探すように、残された本をゆっくりと読んだ。
正直、難しい言葉、漢字があって内容の半分も理解出来なかった。でも、残された本を読むことで夕香ちゃんとお喋りしている気分になった。
それから2年後、私は中学生になった。両親は運動部に入って欲しそうだったけど、私は帰宅部にすることにした。
私はいつも残された本を持ち歩いていた。休み時間も本を読んでいるから、友達はできなかった。
「天野さん」
ある日の休み時間、隣の席の男子が声をかけてきた。
「えっと、磯崎くんだよね? 何か用?」
「その本」
磯崎くんは私が読んでいた本を指差した。
「僕も好きなんだ。特に5巻目が」
私は表紙を見た。浜辺が描かれたその表紙には4と書かれていた。
「ここまでしか持ってないんだ。……そっか、続き、出ているんだね」
「僕、持ってるから今度持ってこようか?」
夕香ちゃんが読めなかった続きを読む。そんな事をして許されるのだろうか。
チカリ、視界の端が光った気がした。
そうだ、「またね」と夕香ちゃんは言った。次に会った時にこの本の続きを話そう。
「貸してもらえると、嬉しいな」
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