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 それから私達は本の貸し借りをよくした。本当は夕香ちゃんの本を貸すのに少し抵抗があったけど、磯崎くんは本を丁寧に扱う人だった。文庫本をカバンに入れる時にペットボトルの水滴などで濡れないように専用のケースに仕舞うこと、読書ノートの存在。紙なんかじゃない、薄い金属でできたおしゃれな栞の存在を教えてくれた。  そして私達は付き合う事になった。  初めてのお互いの誕生日には本屋で売っている栞を贈った。  デートは図書館や本屋、水族館だった。  いつも磯崎くんは楽しそうで、私はいつも自分が楽しいのか分かっていなかった。  だって、半分死んでいるから。  何が楽しくて楽しくないのか、それが分からなかった。  その後私達は、当たり前のように同じ高校を受験して合格した。 「朝美ちゃんは何部に入る? やっぱり帰宅部?」  春の日差しが差し込む渡り廊下を歩きながら蒼介くんは尋ねた。私は唇を尖らせた。 「うーん、そうするつもり。蒼介くんは文芸部?」  私は、足を止めた。それは、あるチラシを見たからだった。  天文部。と書かれていた。 「うちの学校にこんな部活があるんだね」  隣にいる蒼介くんの言葉すら遠くに聞こえるようだった。 「私、ここに入る」 「えっ。帰宅部希望なんじゃ……」  私は踵を返した。 「職員室に行って入部希望を出してくる」 「ちょっと、朝美ちゃん!」  蒼介くんの声が追いかけてくるのも構わず、私は振り返る事なく職員室へと向かい、入部届を出した。ついでに、蒼介くんも天文部に入部届を出していた。文芸部と掛け持ちすると言っていた。  天文部の部員は私達を含めて9人だった。活動内容は放課後集まって天体観測をしたり、合宿をしたり、プラネタリウムに行ったりする。
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