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 今の時期はおとめ座、獅子座が見えるらしい。意外にもというかやっぱりというか。蒼介くんは天体にも詳しくて色々私に教えてくれた。  そして初めての天体観測を迎えた5月初旬、夜の20時半。学校の屋上に望遠鏡をセットする。 「さあ、覗き込んで。スピカが見えるから」  中年の顧問の先生がそう言って、望遠鏡を手で示した。  私は望遠鏡を覗き込んだ。  星々は、光っていた。  堂々と、キラキラと。  大事にしている宝石箱の中にある、色とりどりの石のように。  そしてスピカは、一際強く光っていた。  何故だろう。神さま、という言葉が浮かんだ。  それほどまでにスピカは美しかった。 「どうだ?」  先生は尋ねた。 「……綺麗ですね」 「朝美ちゃん?」  蒼介くんが尋ねる。 「……変だなあ。ちっともモールス信号になってないや」  震える声で言うと、すみません、と望遠鏡から離れた。 「天野さん、具合悪いのか?」  私は首を横に振った。言葉が、出てこない。  ペコリ、とお辞儀をして私は校舎内に続くドアに走る。  まるであの日みたいだ。泣きながら走るなんて。私、もう15歳だよ? お父さんもお母さんも、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんも。皆んな立ち直っているように見えるのに、私だけあの日に置いてきぼりだ。
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