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 誰もいない階段に座ると私は嗚咽を漏らした。  星はメッセージなんか送っていなかった。  あんなのは御伽話で。そもそも星は何百年、何千年も前の光がここに届いているだけなのに。そしてきっとあの話は、星を見たら思い出してねっていうくらいのニュアンスだったのだろう。けれど、信じていた何かが崩れ落ちたような気分だった。 「朝美ちゃん」  後ろから蒼介くんの声が聞こえた。 「何か、あったんだね」  1人にしてほしい。そんな思いが湧き上がる。 「どうしたの? 僕でよければ聞くよ」 「貴方に何がわかるの。半身を失った事がある?」  私は喚いた。  意外にも蒼介くんは怒らなかった。まるで我慢強い年長者みたいに、駄々っ子のような状態の私を見つめる。  私は小さく叫ぶように言葉を発する。 「私には双子のお姉ちゃんがいたの。死ぬ前に、星の瞬きでメッセージをくれるって言ったの! さっきまで、それをほんの少しだけ信じていたの!」  蒼介くんは隣に座った。 「私の事、現実とファンタジーが区別が付かない馬鹿だと思ってるでしょう。そうだよ、馬鹿だよ。本当は、形見の、いつも持ち歩いている本、何割かは理解できないし、すごく面白いとは思わない。蒼介くんは読書の趣味が合う、なんて言ってくれたけどね。貴方が好きになったのはね、私じゃなくて夕香ちゃんの方だよ。本当の私は馬鹿で、スポーツが好きで、2人のお勧めの本なんか特に理解できてない。図書館も本屋も本当は興味無いんだから!」  そこまで言って、蒼介くんは私を抱きしめた。まるで幼い子にするようなそれは、どこか私に安心感を与えた。
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